GARAGEツーリング
「ジャパニズム探求」 第四部(第32話)

昇仙峡から甲府市街まではほぼ下り道。期待していた道だったのに、観光バスの手によって、虚しくも遮られた。
狭い道をノロノロと走る観光バス、おまけに反対側から何台も観光バスが上ってくるので、なす術が無い。
バスよ道路にフタをするな!!

あんたらはおしゃべりしながら座っているだけで観光地に移動できるかもしれんが、バイクはただ座っていても移動できないんだ!!と声を大にして言いたい。とは言いつつもやっぱりバスや電車の中でビールとか飲んじゃったりして、きっと楽しいんだろうなぁ・・・と悪魔がささやく。

すると突如として心の中で葛藤が始まる。

何故おまえはツーリングに来たのだ??そんな甘ったれた事を言うな!!」

「気になるアノ娘とバスでニコニコ観光旅行、いいなぁ・・・」今回は悪魔のささやきの圧倒的勝利。

そんな葛藤を続けるとツーリング日記じゃなくなるのでさらに話を進める。

渋滞気味の昇仙峡〜甲府市内への道で、あまりにも退屈になってきたので、撮影を開始した。
この思わぬ試みがなかなか良い写真を生み出していく事に気づいた。

<↓昇仙峡〜甲府市内へ抜ける道の途中のとある光景>

 

<↓甲府市内にて>

 

 

<↑↓国道411を一路東へ向かう軍団>


一方通行や入り組んだ道の多い甲府駅周辺となんとか攻略しつつ、国道411号線に入る。
この通りは途中で笛吹川と併走するのだが、この季節、そしてこの恵まれた天気の中、最高の景色を見せてくれた。

そうなんだよ、この光景なんだ、広い川原、のんびり風に揺れるススキ、そびえ立つ山々、”その中を悠々と我が物顔で走るXSと俺”。
(”〜”内のXSという文字は個々の愛車に置き換えて想像していただくとよりGood!)

地名の入った標識を撮影するのにこだわりを見せてみた。
危ないからヤメロ!と言われそうだけど、走りながらでも上手く撮影できたのが自慢なのだ!!
画像がアップされ無い時、それ即ちひっくり返った時なのである。

つまり画像がアップされている時は何事も無かった証。

 

<↑↓ジャパニズムの極み>



<川沿いの風景> 

 

   <↓RZRとXS、乗り方の違いがポイント、XS=殿様乗り。うーむ、グレイト>

 

 

ハーレーはアメリカの広い大陸を走れば良い、最新スーパースポーツはサーキットや峠道。
では、まだネイキッドというカテゴリーさえも確立されていなかった時代のバイクは一体どこを走れば良いと言うのか??

答えはここにある。

あの低回転からのトルクは、日本の田舎を、存分に、かつリラックスして走る為にあったのだ。
既に以前の日記でも書いてきたことなのだが、ここが一番重要なところなのである。

日本家屋にメッキキラキラの旧車、田園風景をアップハンで走る旧車、着物を着たお嬢さんをメインにXS&GXなんてのもまたいい。
これぞジャパニズムの極み。

とにかくこのままどんな景色が似合うか回想しだすと、あっという間に妄想2ページが追加されちまうので、ある種の危機を感じながら、話を先に進める。

暖かい日差しの中、笛吹川沿いをのーんびりと、襲ってくる眠気と戦いつつ塩山方面へひた走る。
徐々に甲府盆地を取り囲んだ山々が近づいてくると、この平和な一時との別れが寂しくなった。

どれくらい走っただろうか?ポカポカ陽気の中、少し気だるさを感じつつコンビニで休憩。日なたに座っていると、そのまま昼寝が出来そうな居心地の良さを感じつつ、アイスやらお菓子を食べる。

見てくれよ、この台数。正直驚きました。

 

<コンビニにて平和なひととき>

さぁ、いよいよ甲府盆地ともお別れだ。
ちょっと寂れた感のある温泉街をブバァ〜っと走り抜けると柳沢峠に向けてグングンと上り坂が始まる。

覚えているよ、この上り坂、まだ3214殿が免許を取って数日も経たないうちに走ったこの場所を。
あれから既に五年くらい経つだろうか?でもお互いにXS・RZ-Rというコンビに変わりは無い。

あれより昔、既にXSに乗っていた中で、RZ-R(現3214号)も手にしてしまった自分は、かなりRZ-Rに傾倒しつつあった。
一気にアクセルを捻るとフロントがスゥーッと浮くあの感触にやられちまったんだ。

本妻のXSをほったらかしにした結果、彼女の内面は怒りで充満していた。

結果的に彼女は乗る度に調子が悪くなり、ところ構わず壊れまくった。それが彼女に出来る僕への精一杯の表現だった。

UCGは焦った。

このままにして良い訳が無かった。

苦渋の決断を迫られた挙句に、RZRを3214殿に押し付けた。(プロジェクトX風改めプロジェクトXS)

そんな中で、未だにRZ-Rを譲った3214殿が、いろんな想いを込めて乗り続けてきてくれ、こうしてまた思い出の聖地に立てたというのは本当に嬉しいことである。

あの頃のSoulucg-XS号&3214-RZR号は本当にボロかったなぁ・・・

と回想しながら、ガンガン容赦無く上る。甲府盆地から峠に入る境目には、ちょっとしたスペースがあるので、そこでみんなで記念撮影を撮りたかった。今までのイベントでは、実はあんまり人を撮影してこなかったから、撮ってみたかったんですよね。

上り区間で先を行くマシンはZX-12R。こいつぁーやばい、全く追いつかない。このままじゃ撮影ポイント通過しちまうよ〜っと思いながら必死で追いかけるも、追いつかない。12Rは何ら問題無いペースでも、おいらのXSにとっては、80歳の爺さんが100mを全力で走るくらい命掛けである。もう空中分解するかとさえ思うほどだ。

おうよ、空中分解するならしてくれ、最後まで付き合うぜ!

その格差はゼロ戦と超音速戦闘機並みの差がある。

「あっ、あっあああああ〜」と思う間もなく、峠に向かって、12Rは消えていった・・・XS撃沈

寂しくまた心の中で語りかけたよ、XSに。「マイペースで良い。気にするなよ。良く耐えた。」

三十路馬鹿氏のRZ-Rにその後を任せた。「あとはRZ-Rが追ってくれるから大丈夫。」

XSの機嫌を損ねさせないように宥めながら心の中で会話する。

さぁ、みんなで記念撮影だ!!

<セピア色に変わる瞬間>

 

他を圧倒的にぶっちぎる秘策=上の画像二枚の細かい差に注目せよ・・・勝手にポール牧!!

他にも公道最速を名乗る為の奥義はあるのだが、もちろん今は言えない。

ほとんど休む間もなく柳沢峠に向けて発進。

ここからは奥多摩ダムまで本日最大のワィンディングオンパレード。

標高を上げていくにつれて、昇仙峡でもなったように、グングンパワー感が薄れていく。
RZR軍団も同様の症状に陥っているのだろうか?・・・と感じながら、SRX6-宇賀氏とひたすら逃げモードに入った。

もう宇賀氏とは何度か共に走ってきているのだが(以下戦う)気を抜くとかなりやられてしまう速さを知っている以上、手は抜けない。

とは言えどSRXは反則、これが速い。驚くほどに速い。今度は同排気量、若しくはXS同士で戦おうぞ!!

ごねごねグニャグニャとXSを走らせながら、たまに先頭を交代しつつ快走する。それにしても我ながらびっくりするほどにXSはヨレる。ヨレヨレのグニャグニャだと思うのは毎回のこと。

柳沢峠は我がXSにとっては、ちょっとハイスピード気味なコーナーが多かった。読み流してくれ、こんなのは言い訳なんだ。

でもそれを気にしてちゃいけない。そんな慌しい挙動がきっと次世代マシンへのメッセージとなるのだ。次回のマシン作りに向けての貴重なデーターとなるはずだと言い聞かせるのが精一杯。とにかく精一杯な事だらけなのだ。

ブバァアァアァっと常に高回転を維持させつつ、マシンの挙動に集中。目線はコーナーの先。
ブラインドコーナーであったとしても、その先を見据える。

何があっても、どんな挙動を見せても、目線だけは絶対にコーナーの先。決して目の前を見てはいけない。

コーナー進入前にケツをずらすと、腰高なXSのステップに足が届かない、短足な自分にいらだちを感じながら、必死で押さえ込む。

途中で、ツーリング軍団が休憩しているのを横目に、さらにアクセルオン。
かつて遊郭の女性達が川に投げ込まれたという話が残る多摩川源流の「おいらん淵」をかすめつつ、山々に二気筒サウンドをこだまさせる。

懐かしいよ、この道が。高校の頃、丹沢や奥多摩山塊に毎週のように出掛けていた頃。
この道は夏の合宿で、真夏の炎天下の中を数十キロの荷物を背負って歩き通した場所だ。

途中で飲み水が尽きて、山筋から流れ落ちる沢の冷たい水を顔に浴びながら飲んだ場所。
車やバイクにガンガン抜かれながらひたすら歩き続けた数十キロの道のり・・・今じゃそこも右手を一ひねりで通過できる。

引き続き唸りを上げながらひたすら9千回転付近をキープさせるが、ノーマルのステップに大アップハンドルでは限界も見えてくる。

今の仕様ではあれが限界だった。でもSRX相手に、良く頑張ったよな。これが宇賀旗艦SR号になっても、やっぱり現時点での結果は見えているかもしれない。(きっとSRXは余裕だったはず)

既にエンジンをOHしてから四万キロ、足回り&エンジン共に見直してやろうと感じた。

ダムが見え始めて、車が列を成し出した頃、RZRとZX12Rがプァーンっと走り抜けていった。

のろのろとダム沿いを走りながら、いくつかのトンネルを抜けると3月に開催した奥多摩ミーティングの駐車場に到着した。やっと帰ってきたよ、懐かしいこの場所に。

我がXSも無事に走りきり、続々と軍団が到着。
今後、どういう風に今のXSを持っていくか考えながら、今回の柳沢峠ステージは終わった。

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