電気系統見直そうぜ
第十五話

 

今回は電気系にまつわる異常な話。

今振り返ってみると電気ほど大変だった箇所は他に無かったと思う。何故かって?

それは電気は目に見えないし、それなりの知識もひつようだったからに他ならない、多くのサンデーメカニックを自負する者にとっての最大の鬼門ではなかろうか?

もちろん私もその一人だったことは言うまでも無い。だが今まで、この見えないブラックボックス=電気系統を一人で直してこれたのは明らかに一般的な人たちと違うアプローチをしてきた事に他ならない。

電気と突然言われてもあまりピンと来ない、それは妄想すら許さない未知なる領域なのだ、そして目の前で起こる点火ということに卓上の理論は通用しない。いくら理論を考えたところで火花は飛ばないのだ。

以前から私には火にまつわる出来事があまりにも多く、XSを全面的にリファインする為の欠かせない要素は火であったと言っても過言ではないのだ。火と言うか炎と言うか・・・今回は割愛するがそのうち火にまつわるエトセトラってのを書いてみよう・・・笑

とりあえず不動車だったXSを走らせたいが為にキャブレターオーバーホール(=以下OH)を急いだことが事の始まりだったのだが、少しその辺を話してみよう。

キャブレターってのは全てがちょうど良い機能をして初めてバランスの取れたものになると思うのだが、いくらOHしても本来の機能を取り戻せない経験は誰にもあると思う。最終的には他の部分の不調ではないかと疑ってしまうことも多い。どんなにキャブのOHをやっても思うように成果が上がらず、挙句の果てにはキャブは大丈夫なのだと言い聞かせてしまう事もあるほどだ。とは言っても自分のXSの場合、既にキャブが駄目なのはうすうす気付いてはいたんだけど・・・

そりゃー失敗だったよ、いくらOHしてもオーバーフローが止まらなかったんだもの・・・未だに怒りが込み上げるその原因は真鍮製フロートの腐食による穴開きによりフロートが沈みっぱなしになって、ジャジャ漏れへ・・・

結果的にわかった事なのだが、その頃は点火系も不調で、実はプラグコードの劣化により火花がリークしていた。

そこへキャブレターオーバーフロー状態でキック一発・・・もう結果はわかったと思うが、火(=リークした火花)に油改めガソリンを注いでしまったのだった・・・

予期せぬ状況で、ガソリンに引火する事態を想定してもらいたい。そして、その場がもし一人だったら絶対に火は消し止められないだろう。しかもそれが普通の人ならば尚更である。ただただ慌てふためき、呆然と立ち尽くすか意味不明な行動に出るのがせいぜいなのだ!(息を吹きかけてフーフーしたり、Gジャンでバタバタしたり・・・)

そして、その普通の人というのがこの時、運悪く俺になり(この引火についてはXS日記の第1話にも書かれているので参照してもらいたい)そんなどうしようもないミスで電気系統は全て灰になった。

幸いメインハーネスの焼損と真っ黒クロスケな外観、それと銀色(鋳物のアルミ地)だったはずのキャブレターが瞬時にしてブラック仕上げにカスタムされてしまった程度で済んだのだが・・・トホホ。

だが配線を繋ぎ直せば復活しそうな予感、いや復活させる自信はまだ持っていたのだ。どういうことか?それは地道だが簡単なことで、まずテスターで点火ユニットの生死を測定し、あとは配線図に従って配線を引きなおすということだったのだ。およそ三日で修理を完成させプラグコードも交換し、息を吹き返した我が愛しのXSだったが、もうそこに昔の無知な俺はいなかった。どんな事でも、きっと自分の手でやれるんだと自信を持ち始めていったのである。

そうなると、いつしかレストアがカスタムへと変わり始める。バイク関連の雑誌のどれを読んでも電気系統の話題は見つかりにくいのが現状だと思うが、電気無しにバイクは走らないのも現状である。で早速、目を付けたのはドラッグレース等で有名なDYNATEK社(点火系のパーツで有名)だった。もちろんXS用なんてラインナップはなかったが、そこは創意工夫と溢れ出さんばかりの情熱で適合するイグニッションコイル(電力増幅装置)を探し出すことに成功した。

交換してみて、こいつは劇的だった、これまでのY字電極のプラグや高性能と謳われているパーツのどれもを凌駕していた。雑誌で特集していたりするプラグやプラグコードのインプレッションなんて一蹴してしまうよ!本当に。雑誌のインプレなんて実際には何の役にも立たない、気になるなら地道に実験するのが楽しいものよ!

今まで、どれを変えても「うーん、変わったような気がする、いやせっかく変えたんだから絶対変化したんだ。うんうん絶対変わった。・・・ような気がする」ていう、無理に納得させる恒例行事からIGコイルを交換した時は「うおーー、これは全然違うよ!!」って自然に納得するほどに変化したのである。

さらにその後、大枚叩いてノロジーホットワイヤーを投入し、プラグはイリジウムプラグにし、その効果はさらにアップしたのだ。自分が考えられる中では最強の組み合わせだと思うのだがどうだろう?とにかくプラグコードとプラグを変えただけで最強の点火だと言い張っているようではまだまだ甘いのだ!そのうち点火ユニットもデジタル点火ユニットにしてやる!!

この当時は、まだ成金時代で資金に余裕もあったが今では考えられない程に豪華なパーツのセレクトだったと思う。もちろん電気を供給するバッテリーからのラインに不具合(アース不良や断線、点火ユニット不良)があっては問題だが、それらがまともなら最高のパフォーマンスを発揮することは間違いないだろう。

そしてもう一つ面白い結果が得られたことも記述しておく。

XS250/400はフルトランジスタ点火で電力供給をバッテリーに依存しているのだが、バッテリーの寿命が近づいてくると、振動が増えて、快適に走らなくなり、パワーダウンするように思われるのだ、しかもバッテリーがダウンする度に毎回経験することである。

この理由はハッキリと説明出来ないのだが(おそらく電圧降下が原因)、交換時期の近いバッテリーで充電する前と補充電した後で、乗り比べてもらいたい。普段からフルトラ仕様のXSやGXに乗っていれば必ず体感できると思う。充電後は本当に滑らかで一発一発が力強く感じられる。

以上のことより電気のバケツ=バッテリーも忘れてはならない重要な存在だといえる。ポイント点火車両の場合どうなのかは不明であることも付け足しておこう。

とりあえず点火系統をいかにして考えてきたか?という話はこれでお終い。珍しくオチの無い、真面目な話になったが、目に見えないブラックボックス=電気系統の話なんてそんなもんだよ・・・と言うことにしておく。

次も電気の話は続くよ

電気系統見直そうぜ!第十五話完